皆さんは、「人生の最期をどのように迎えたいか」と考えたことはありますか?
「できる限り健康で長生きし、最後は家族に迷惑をかけず、苦しまずに『ころり』と旅立ちたい」——それは現代を生きる私たちにとっても、そして何百年も前の人々にとっても、全く変わらない究極の願いでした。
会津地方には、その願いを叶えてくれる「会津ころり三観音めぐり」という信仰が古くから根付いています。
中田観音(会津美里町)、立木観音(会津坂下町)、鳥追観音(西会津町)の3つのお寺を巡り、「抱きつき柱」にすがりついて祈願することで、三毒(むさぼり・怒り・愚かさ)を消し去り、安らかな極楽往生が約束されるというものです。
今回は、歴史の謎解きと美しい建築を楽しみながら、自分自身の「生と死」を見つめ直す、大人のための巡礼ドライブコースをご案内します。
1. 母の深い愛と悲しい伝説【中田観音(弘安寺)】
まずは会津若松からほど近い、会津美里町の「中田観音」からスタートしましょう。
ここは、あの世界的な細菌学者・野口英世の母であるシカが、息子のやけどの治療と立身出世を願って、毎月欠かさず「おこもり(月詣り)」をしたことで知られるお寺です。
時代を超えて交差する親の愛情
ご本尊の「銅造十一面観音(国指定重要文化財)」には、ある悲しい伝説が残されています。鎌倉時代、江川長者という人物が、17歳の若さで亡くなった一人娘・常姫の供養のためにこの等身大の観音像を鋳造しました。
母が息子の成功を祈る姿と、父が亡き娘を想う姿。時代を超えて「親の深い愛情」が交差する、とても温かく、そして少し切ない場所です。
堂内にある「抱きつき柱」にしっかりと抱きつき、最初の祈りを捧げましょう。
2. 根がついたままの巨大観音!【立木観音(恵隆寺)】
次に向かうのは、中田観音から車で約20〜30分、会津坂下町にある「立木観音」です。
ここの最大の見どころは、なんといっても茅葺屋根の雄大な本堂(重要文化財)と、その中に安置されている高さ約8.5メートルにも及ぶ巨大な「十一面千手観音像」です。
驚くべきことに、この観音像は「生えているケヤキの大樹を、根がついたまま彫り上げた(立木仏)」と伝えられており、現在でも床下まで根が続いていると言われています。
見上げると首が痛くなるほどの圧倒的なスケール感と、大地のエネルギーを直接吸い上げているような生命力。
ここにも立派な「抱きつき柱」が用意されています。巨大な観音様の慈悲に包まれながら柱にすり寄り、「どうぞ長患いすることなく、ころりとお導きください」と念願しましょう。
3. 左甚五郎の「隠し彫り」ミステリー【鳥追観音(如法寺)】
最後は、さらに車で約1時間。大自然に囲まれた西会津町の「鳥追観音」へと向かいます。ここは天才僧・徳一が「会津の西方浄土」として開いた屈指の観音霊場です。
ここのお堂の造りは非常にアカデミックで、全国的にも珍しい「東口から入り、参拝したら戻らずに西口(西方浄土の方向)へ抜ける」という一方通行の構造になっています。建物の構造そのものが「人生からあの世への旅路」を表しているのです。
そして、建築ファン必見なのが、江戸時代の伝説の彫刻職人・左甚五郎が彫ったとされる「隠れ三猿」です。
「よく生きる」ための巡礼の旅へ
いかがでしたでしょうか。
「ころり三観音」という名前を聞くと、少し縁起でもないと思われるかもしれません。しかし、死を想うこと(メメント・モリ)は、「今をどう生きるか」を真剣に見つめ直す最高のアカデミックな体験でもあります。
「旅の糸」では、こうした歴史の背景や仏教の死生観を、ガイドの豊かな知識と共にじっくりと紐解く【教養(Academic)スタイル】のツアーをご用意しております。
ご朱印帳を片手に、会津の美しい景色の中をドライブしながら、自分自身の心と向き合う静かな時間を過ごしてみませんか? 各お寺間の移動時間(合計約1時間半〜2時間)も、ガイドとの歴史トークに花を咲かせる至福のひとときになるはずです。
【会津ころり三観音 巡礼データ】
※車での巡礼がおすすめです。ゆったりと一泊二日で巡るのも素晴らしい体験になります。
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寺院名(所在地) |
拝観料 / 開帳など |
アクセス・見どころのポイント |
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中田観音(弘安寺) |
堂内拝観400円 |
野口英世の母シカゆかりの寺。悲しい伝説を持つ銅造十一面観音。 |
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立木観音(恵隆寺) |
拝観料300円 |
高さ8.5m!根がついたまま彫られたという巨大な千手観音の圧倒的迫力。 |
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鳥追観音(如法寺) |
拝観無料 |
左甚五郎の「隠れ三猿」探しと、東から西へ抜ける「西方浄土」の建築構造。 |