国指定重要文化財に指定されているような立派な仏像と聞くと、「すべてが完璧に計算され、神聖なオーラに包まれている」と想像しますよね。
しかし、福島県会津坂下町にある「上宇内薬師堂(かみうないやくしどう)」を訪れると、そのイメージが少し変わるかもしれません。
ここは「会津五薬師」の西方を守る重要な古刹なのですが、安置されている仏様たちをよ〜く観察すると、「あれ? なんかここだけ雑じゃない?」とツッコミを入れたくなるような、人間味あふれる不思議なポイントがいくつも隠されているのです。
今回は、高尚な美術解説だけでは絶対にわからない、仏師たちの「裏の顔」を読み解くアカデミックなミステリーツアーへご案内します。
【ミステリー①】なぜ薬師如来の「足」だけが薄っぺらいのか?
お堂の奥へ進むと、像高1.83メートルにも及ぶ巨大で堂々とした「木造薬師如来坐像(国指定重要文化財)」が出迎えてくれます。
ケヤキの一木造りで、ぽってりとした優しく柔和なお顔立ち。平安時代中期(10世紀後半)の傑作です。
しかし、このお薬師様の下半身(あぐらをかいている足の部分)に注目してください。立派な上半身に比べて、なんだか足だけが不自然なほど「薄っぺらい」のです。
一体なぜでしょうか?
納期と戦う江戸時代の職人たち
実はこの仏像、江戸時代の元禄年間(1690年頃)にお寺を再興した際、下半身が腐食していたため大急ぎで修復されたという歴史があります。
伝承によると、お寺の「落慶法要(リニューアルオープン)」の日にちが目前に迫っており、仏師たちは大慌て!
「どうせ参拝者は下から見上げるし、布(漆)で覆って隠れちゃうから、見えない足の部分は省略して早く仕上げちゃえ!」と、超特急で(少し手抜きをして)作られたのではないかと推測されているのです。
納期に追われて必死に言い訳をする江戸時代の職人たちの声が聞こえてきそうで、なんだか親近感が湧きませんか?
【ミステリー②】四天王をムリヤリ「改造」した十二神将!?
お堂の入り口近くには、薬師如来のボディーガードである「十二神将(じゅうにしんしょう)」のうち、5体の仏像が並んでいます。
しかし、この仏像たちにも「ある重大な疑惑」がかけられています。
一般的に、邪鬼(小鬼)を足で踏んづけているのは「四天王」の役割であり、十二神将は邪鬼を踏みません。それなのに、ここの十二神将たちはなぜか思いっきり邪鬼を踏んづけているのです。
しかも、5体のうち1体だけ明らかに作風が違い、棒立ちでアニメキャラクターのような顔をしています。
「大人の事情」が生んだ奇跡のコラボ?
ここからは推測ですが、当時の人々の間でこんな会話があったのかもしれません。
- 「本尊が薬師如来なんだから、やっぱり十二神将が欲しいよなぁ」
- 「でも、新しく12体も作るお金なんてねぇべ」
- 「だったら、そこら辺にあった『四天王(4体)』を改造して、十二神将ってことにしちまおう!」
- 「おお、それ名案! ついでにもう1体だけ新しく作って5体にしたろ!」
真実は闇の中ですが、そんな「予算の都合」や「大人の事情」を想像しながら仏像を見るのも、歴史探訪の最高に知的なエンターテインメントです。
【教養視点】「修行中」か「悟りを開いた後」か?
もちろん、笑えるエピソードだけでなく、深い仏教の教えも隠されています。
同じ会津五薬師である「勝常寺」の薬師如来と、この「上宇内薬師堂」の薬師如来の座り方(結跏趺坐)を見比べてみましょう。
顔つきが違うのには、こうした教義的な理由がしっかりと隠されているのです。
仏像に隠された「本音」を探るフィールドワークへ
いかがでしたでしょうか。
美術書に載っている「立派な文化財」という堅苦しいメガネを外してみると、そこには予算や納期に苦しむ、私たちと同じ等身大の人間ドラマが隠されていました。
「旅の糸」では、こうした仏像の「裏話」や「見分け方のコツ」を、ガイドが面白おかしく、かつアカデミックに解説する【教養(Academic)スタイル】のツアーをご用意しております。
「この仏様、絶対納期に遅れそうになって焦ってたよね(笑)」
そんな風に、江戸時代の職人たちと心の中で対話しながら、楽しくディープな仏像鑑賞に出かけませんか?